岸和田 清 その1

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 それからしばらくして、「なぁ、にぃ!」と怒声が聞こえてきた。  ドシンドシンと大きな足音を鳴らして、番場がやってくる。足音だけでわかる。体が震え出す。恐怖が増していく。 扉が開く。 「どういうことだ?」 番場の声が妙に恐い。殴られる、と分かっているからだ。  扉の向こうには柏と、ぐったりと倒れる副会長。それと……柏が飯塚を殺したあと、すぐに従った岩瀬原と岩瀬原に宛がわれた遠久の姿があった。 四人とも、全員が全裸の異様な光景。完全なる事後の臭いが僕の鼻に届いて、顔をしかめてしまう。 「どういうことだ?」  胸倉を掴んで、番場は僕にもう一度尋ねた。 「なにが、ですか?」 「なぜ、電話に出た。それになぜ、自分ではなくあいつをご指名なんだ?」 「それは少し小難しい話になるから、副会長のほうが理解が早いんじゃないかって」 「なるほど、分かった」  そう言って僕は殴られた。
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