第1話

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「ノボルちゃん、おなかすいた」 「コダマ、見ろ、これが我が家の必殺家計簿だ」 「秋の夕陽より真っ赤だね」 「おう、良く気づいたな、血まみれだ。それというのも」 「おなかすいた」 山田家では良くあるやり取りだ。 けれどもコダマだって、好きでこんな体質になったわけではない。 いつ頃気づいたのだろう。 他の人は物の言葉を聞くことはできないし、口に出さない人の思いなど、感じ取ることができないなんてこと。 何故か、力を使うとやたら腹ぺこになることも。 コダマの気持ちをわかってくれるのは、同じ力を持つ祖母のサクくらいだ。 両親も姉妹も愛情深い人達だ。 コダマの力を知っていても、とても可愛がって慕ってくれた。 それにも関わらず、コダマはどこか言いようのない孤独感を抱えていた。 父親が興した会社が倒産し祖母と暮らすことになった時、コダマは心底良かったと思ったものだ。
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