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ネクタイを首に掛けた大地は、浩巳の言葉に明日の予定を思い出し眉間に皺を寄せた。
「あー……ごめん、明日は無理だ」
「なんか予定あるの?」
「…………」
突然、口を噤んだ大地に、浩巳は手を止めると不思議そうに顔を向ける。
気まずそうにこちらを見詰めている大地と視線が重なると、浩巳は首を傾げた。
「なに?」
大地は目を伏せると重たい口を開く。
「……月に一度の面会日」
「……あぁ」
納得したように声を漏らし再び手を動かし始めた浩巳に、大地は申し訳なさそうな顔をする。
「ごめん」
そんな大地に気付くと浩巳は笑みを浮かべながら近付いていく。
大地の前に立つと首に掛かったままになっているネクタイを結びながら問いかけた。
「なんで謝るの? 大地は父親なんだから子供に会うのは当然だろ? 親子水入らずでゆっくりしてきて」
大地は少し考え込むと、浩巳に向かっておずおずと声をかけた。
「……なぁ?」
「ん?」
「……お前も来るか?」
「えっ……」
目を丸くし顔を上げた浩巳に、大地ははにかみながら言葉を続ける。
「その……”ひろみ”に会ってみるか?」
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