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自分の様子を伺うように問いかけてきた大地に、浩巳は一瞬呆気に取られるもさっさとネクタイを結び終えると小さく溜息を吐いた。
「……会ってどうするの?」
呆れた顔をしてその場を離れて行く浩巳に、大地は慌てて声をかける。
「いやっ……その、これからも”ひろみ”とは会う訳だし、お前のことも知っといてもらった方がいいかなって」
大地の言葉に浩巳は苦笑いすると、再びベッドを整え始めた。
「なんて紹介するの? 『パパの恋人です』って?」
「お前がいいなら、そう紹介するよ」
「…………」
冗談で問いかけたつもりが、大地の真剣な声に思わず言葉を失う。
おずおずと視線を向けてきた浩巳に、大地は柔らかい笑みを浮かべた。
「隠したくないんだ。お前のこと」
「……大地」
「それでどう思われても、俺は構わないから」
「…………」
神妙な面持ちをして口を噤んでしまった浩巳に、大地は苦笑いするとベッドルームを出て行く。
「考えといて」
「…………」
一人その場に取り残された浩巳は、一度だけ会ったことのある大地の娘の顔を思い出し眉を潜めた。
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