2010年4月

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好きで選んだ「弱者」の道だもの 私は、医学的には、障害者であり、法律的には障害者ではない。つまり、障害者手帳を持っていない。赤緑色弱と言って、赤と緑の区別がつきにくい。色盲ではなくて、色弱であるから、障害者手帳を受けても7級である。JRはこういう等級の低い障害者を値引きしないし、市内の路線バスは、半額になるったって、ダイヤ上使い物にならないから、使わない。何より、手続きが面倒である。 私の大学時代、色弱は運転免許が取れなかった。道路交通法改正で、取れるようになった時は40を超えていた。当時、世界一ドライバーのマナーが悪い大阪に住んでいたので、運転が恐く、運転免許は諦めた。 法律的にも、経済的にも、運転免許が取れる環境にいながら取らなかったのだから、私は「交通弱者の交通権をまもれ、赤字でも路線バスを維持せよ」とは叫ばない。黙って自転車ずぶ濡れ旅行か、タクシー大名旅行かを選んでいる。 妻は逆の人生を歩んだ。全聾で2級障害者。道交法改正を聞き、果敢に運転免許に挑戦した。最初、コミュニケーションの障害から、泣いて帰る日が多かった。自動車学校教官に手話をマスターせよ、は、無理な相談で、私は自動車学校に「手話通訳同伴」を認めさせ、私自身が手話通訳を勤め、妻は運転免許を取った。 妻の友達が羨む。ご主人が手話通訳にたつ位、恵まれた家庭だから、と。 ハタと思い当たる。 ご主人が、残業続きで妻の自動車学校まで付き合いかねる、または「聾者が免許取れる訳がない」と意識が遅れている家庭こそ、「福祉」の出番ではないのか。 運転免許から、情報処理技術者、果ては弁護士に至るまで、自力を目指す障害者には、自力実現まで、徹底的に面倒見るが良い。 半端な年金で命だけは守ってやる、でしゃばるな、で、一生不名誉な福祉依存症患者を抱えるより、経済自立にむけて、集中投資して、自立に成功したら、納税もして貰う。その方が全体として安く上がらないか。 西洋の諺に言う。 「野良犬に餌を与えるより、餌の取り方を教えろ」と。 こういう「真の福祉」の実現に、もっとも距離が近い政党を次の選挙では、見極めたい。 色を失う代わりに、人並み外れた記憶力を私に与えてくれた神に感謝しつつ。
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