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「え?」
「彼氏と長い事付き合ってるんだろ~?」
この重い空気と秋恵の暗い顔に、直兄は気付いていない。
フラれた兄と浮気をした妹。
どんな気持ちのぶつかり合いになるのか。
「…結婚はないかなぁ」
「ん? 何で?」
「私も彼氏も…心変わりしたから。
多分…別れる…かなぁ」
「何だ、それ。心変わりって、浮気か?」
直兄の表情は一瞬にして変わっていった。
酔いも覚めてしまうよな…。
「…うん。お互いにね」
「お前も浮気したのか?」
声にならないのか、直兄の問い掛けに秋恵は黙って頷いた。
それから話した事は、俺と修二に言った事そのままだった。
少しの沈黙を直兄が破る。
「彼氏への仕返しか?」
「そんなつもりないよ。
本気でその人を好きになっただけ…」
「そっか? このタイミング、そう思うぞ?」
「違う…」
真っ直ぐに見据える直兄の視線は秋恵を捉えている。
その視線に合わせる事なく、秋恵は俯いていた。
「お前が違うって言うなら信じるよ。
でもこんなに時間が経ってるのにそいつの所に行かないのは、何かあるんだろ?」
「…何か?」
「そいつにも彼女が居るとか、結婚してるとか」
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