Side 和斗  真実

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俺が気付けなかった事に直兄は気付いた。 益々空気は重くなる。 俺が耐えられなくなりそうだ…。 「…うん。結婚してる…」 「やっぱり。それなら彼氏に戻っとけ。 そいつを好きなままでもいいって言ったんだろ?」 昔から直兄と過ごして来たけど、こんなにもハッキリ物を言う人ではない筈だった。 やっぱり妹を一番理解してるのは兄貴なのか。 どんな言い方をすれば秋恵の心に響くのかよく知っている。 「言ったけど…。戻れないよ…」 ーーー浮気相手と別れたとしても      佳春には戻らないだろうな…ーーー 決めるまでに沢山悩んで時間は掛かるけれど、決めた事は曲げない頑固な奴だ。 直感で俺はそう思った。 「結婚してる奴を好きなままでいても未来はないんだぞ。 いい加減に目を覚ませよ」 「…考えてみる…」 ーーー目を覚ませ…かぁーーー “恋は盲目”なんてよく言ったものだ。 周りが見えなくなり、同時に人の気持ちを考える事すら出来なくなる。  『どうか日陰で秘密にする事なく、    堂々と太陽の元で愛が語れますように…』 俺にはそう願う事しか出来なかった。 翌日。 3人で昼食を摂ってから地元を後にした。 また愛が絡み合う街へと車を走らせている。 「ねぇ、かず?」 「ん?」 甘く切ない歌声に包まれながら秋恵が口を開いた。
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