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「…ありがと。
でも、もう少し待ってくれないかな…?」
寂しそうに微笑む修二を見て、答えを急ぎすぎたと後悔した。
俺には待つ事しか出来ない。
「…話してくれますか?」
「……約束するよ」
少しだけ頷いて、俺は店を後にした。
深い溜め息を空に吐き出しながら、いつもの帰り道を歩いた。
修二を信じて待とうと決めた心は、どこかへ旅立ってしまいそうだ。
♪~ 着信中 松崎里子
「はい?」
『和斗くん? 今仕事中?』
「いや、帰り道だけど…。どした? こんな時間に…」
近くにベンチを見付けて腰を降ろした。
時は真夜中。
こんな時間に電話なんて掛かって来ないのに…。
『どうしても話したくて待ってたんだ。
昨日話せなかったし…』
「そうだな」
里子から電話があるなんて、理由は一つしか思い浮かばない。
『ごめんね。昨日、秋恵に言っちゃった…。
聞いた?』
「うん、聞いた。謝る事ないよ。
里子が言ってくれて助かった」
『え?』
思わず本音が出た。
“今更蒸し返すのも…”と思っていたのも事実だ。
「今更どうやって秋恵に言おうかなーなんて思ってたしな」
『…嘘でしょ』
「…嘘じゃないよ。どして?」
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