Side 和斗  真実

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『声がいつもと違うから。 そう思おうとしてるのかなーって』 「…そんな事ないよ」 声だけで見破られてしまうなんて、俺もまだまだだな…。 『そう? でもごめんね。 やっと忘れられた頃に思い出させて…』 「大丈夫だから。もう気にすんな」 本当に怒りなんてものは存在しなかった。 それよりも俺の心を占めて居るのは、今日の修二だったから。 『うん、解った。ありがと』 「なぁ、里子? 俺ってさ…。 悩みを打ち明けて貰えない程頼りないかな…?」 『…突然どうしたの?』 深く吸い込んだタバコの白い煙を、空に向かって吐き出した。 「尊敬してる店のマスターが何かに悩んでるみたいでさ。 思い切って聞いてみたけど、もう少し待ってくれって話して貰えなかったから…」 肌に触れる少し冷たい風が、あの寂しい笑顔を連れて来た。 『和斗くんはさ、自分の中で整理がつかなかったから秋恵に話せなかったんでしょ? それは秋恵が頼りないからじゃないよね?』 「うん、違う…」 『マスターも同じじゃない? 和斗くんが心を許せる存在だからこそ、中途半端に相談なんか出来ないんじゃないかな。 待ってくれって言われたなら、男らしくドッシリ構えて待ってなさい』 里子の言葉は心に染みた。 修二は話すと約束してくれたんだ。 それを信じられなくてどうする…。 「ありがとな。元気出た」 『どういたしまして。じゃ、おやすみ』 不思議だ…。 いつまでも待って居られる気がするよ…。
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