Side 和斗  新しい人生

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音楽だけが流れる空間。 俺達が同時に吐き出した白い煙は、部屋の空気を重くした。 何度体感しても、やっぱりこの空気は好きになんてなれない。 「お前と不倫してた事。 修さんが本当に秋恵を好きな事伝わってきて、ようやく応援しようって気になれたんだ」 「…やめてよ…。 思い出さない様にしてたのに…」 俯いて絞り出した秋恵の声は少し震えていた。 俺が口にした応援の気持ちは、またお前を迷わせてしまったね…。 「ごめん。 でもお前が佳春さんを選んだなら応援するから。 頑張れよ」 「…うん、ありがと。 あの…、修には言わないでね。引っ越す事…」 「解った」 この世に産まれてから今日まで、学生の時も社会人になっても。 互いに誰かと付き合ってもずっと近くに居た。 バカな事を言って笑い合ったり、2人で朝まで飲み明かしたり。 喧嘩もしたけど、翌日には昨日よりも互いを解り合えてた。 “もう、すぐには会えないんだ” そう思うと、目頭が少し熱くなる。 「俺はここに居るから。 迷ったらいつでもこの街に戻って来いよ」 「うん、ありがと」 笑って送り出す事しか出来なかった。 なぁ、秋恵? お前が決めた事に反対なんてしないよ。 でも本当は気付いてるんじゃないのか? 佳春はお前を見ていないよ…。 “愛してはいけない人” そう決め付けて修二を諦めないで欲しかった…。
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