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秋恵が引っ越して数日が経った。
今日は修二が休みで程良く客の出入りがある為に、あまり考え事をせずに済んでいる。
女同士
カップルや夫婦
会社の上司と部下…。
なぜか恋愛の話ばかりが耳に届いた。
嫁が最近冷たくなった
旦那が不倫してるっぽい
どうしたらいい?
心の中で俺は静かに呟いた。
ーーー…知らねぇよ…ーーー
声に出せたらどれだけ楽になれるだろう。
人の恋愛話を冷静に聞ける余裕がない。
…晴花、元気かな…?
♪~~ 着信中 相沢修二
現実に引き戻すかの様に、ケータイが音楽を奏でる。
修二から仕事中に電話なんて珍しいな。
裏に下がりながら通話を開始した。
「はい?」
『和斗? 今忙しいか?』
「いや、大丈夫です。どうしたんですか?」
心なしか、修二の声が少し暗い様な気がした。
『本当は会って言いたかったんだけど、報告と頼みがあって…』
「? 何ですか?」
『離婚…、成立したから』
「そう…ですか…」
『で、明日空いてたら引っ越し手伝って欲しいんだけど…』
「はい、いいですよ」
予想もしていなかった報告に、言葉を失いかけた。
だけど声で伝えてくれた事が嬉しかったんだ。
ありがとう…。
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