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「何で?」
「何となく気になって」
「…まだ思い出すと辛いから、もう言わないでな?」
「…ごめん…」
俺は不倫を大反対していた。
今もその気持ちは変わらない。
だけど2人が互いを想い合いながら、苦しむ姿を近くで見てきて。
“不倫から始まる恋”も有りだと思った。
全てを捨ててでも、本当に愛してる人の元に行きたい…。
わざわざ辛い道を選ぶ事なんてないのにな…。
「早く用意しないと飯奢るの無しにすっかな~」
「え!? そりゃないよ~」
修二に煽られて俺は準備を始めた。
“運命”なんてあんまり信じてないけど、もし2人が結ばれるのなら…。
きっと互いに導き合ってくれるよな…。
「なぁ、和斗?
俺が離婚した事、暫く店の客に内緒な」
「独身になったって解ったら、女の客黙ってないですもんね」
「…お前なぁ…」
今までの辛い空気を吹き飛ばすかの様に、冗談を言って笑い合った。
まぁ、店の客が黙ってないのは本当だけど。
「冗談ですよ。俺からは言いません」
「ありがとな」
なぁ、修二?
過ちを犯しても再び手に入れた男と
己の全てを捨てても手放した男
どうして後者のアンタが辛い想いをするんだ?
前者の男は犯した罪を反省なんてしてないよ…。
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