Side 和斗  新しい人生

11/13

88人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
「そろそろ行く?」 「そうね。でも飲み足りないなー」 「…充分だと思いますけど…」 ーーー…おい、おい…ーーー 真っ赤な顔をして言う台詞じゃないだろ… と、心の中で呟いた。 「部屋で飲めば?」 「和斗もね。さ、行こう」 左手にバック、右手に伝票を持って朋佳は席から立ち上がった。 「え?」 「何?」 「いや、伝票…」 「弟に奢らせる訳ないでしょ。外で待ってて」 「ご馳走さん」 相変わらず朋佳は男らしかった。 言葉が足りなくていつも勘違いされてしまうけど、そんな姉が俺は好きだった。 「…寒っ…」 朋佳が会計をしている横をすり抜けて外に出た。 肌に触れる冷たい風が体の熱を奪い去る。 朋佳の奴、上着無かったけど大丈夫かな? 街にはまだ人の動きがあった。 行き交う人々が足早に通り過ぎてゆく。 「お待たせー。寒っ!」 店から出てくる朋佳と入れ替わるかの様に、腕を組んだカップルが店の中に姿を消した。 自動ドアが閉まるのと同時に胸が高鳴る。 ーーー…は? 何で?ーーー 確信は無い。 けど…。 佳春と夏美だった様な気がした。 「和斗? どうしたの?」
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加