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「修二さん離婚されてるんですか?」
「うん。半年位経つかな」
朋佳が来てから1時間と少し。
昨日よりも早いペースで酒を流し込み、今日も出来上がっている。
「何でですか?」
「姉ちゃん、失礼…」
素面では言わない様な事も、酒が入るとブレーキは効かなくなる。
修二が離婚した事を話すのは、俺以外で朋佳が初めてだろう。
「全然いいよ。
本気で愛した女が居てさ。
どうしてもその女が俺の中から消せなくて家族を守れなくなったから…かな」
「…不倫…ですか?」
「…うん。最低だろ?」
「…はい。最低です」
ーーーおい…。ハッキリ言うなよ…ーーー
朋佳は少し俯いてそう答えた。
修二は苦笑いをしながら酒を流し込んでいる。
「それだけハッキリ言われると気持ちいいな」
「…奥さんに嫌な所があったから他の人を好きになったんですか?
他の人の元に心がある修二さんを、奥さんはずっと知らないフリして待ってたんじゃないですか?」
「え?」
強気の発言とは正反対に朋佳の声は震えていた。
「修二さんが好きな人と居て満たされてる間、奥さんは涙を流してたんじゃないですか?
その気持ちは修二さんには解らない…」
「…姉ちゃん?」
震えた声が消えそうになる代わりに、涙が頬を流れてゆく。
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