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「…ごめんなさい…。言い過ぎました…」
「朋佳ちゃんの言う通りだな。
俺が他の女と幸せになろうとすれば、必ず不幸になる人が居る。
和斗にも言われた事あったっけな…」
流れ落ちた涙を拭って、大きく息を吐き出した。
落ち着こうとすればする程、泣き出してしまった心は止まる事を知らない。
「そんな事言いましたっけ?」
「言ってただろ。
『人の不幸の上に成り立つ幸せなんて有り得ないんだ』って」
「あぁ…。そう言えば…」
いつかの日に秋恵に向けて言った言葉だった。
「朋佳ちゃん、何かあったの?」
「…修二さんの奥さんが、自分と重なって…」
「ん?」
「…主人が出張なんて嘘なんです。
家出して来て…」
「「え?」」
無意識に発した声は修二の声と重なった。
俺と同じで修二の頭の中も疑問符だらけだろう。
「色々ありすぎて2人共不満が爆発したんです。
お互いに言いたい事言って、頭冷やす為に出てきました…」
「何があったの?」
「…実は…」
乾いた体に酒を流し込んで、落ち着きを取り戻そうとしている。
朋佳からは笑顔が消え、悲しみに満ち溢れていた。
ずっと長い間独りで抱え込んでいたんだろう。
笑顔を絶やさなかったから気付いてやれなかった…。
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