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俺と修二は、朋佳の声に耳を傾けた。
子供が欲しくて夫婦で不妊治療に通いたい妻。
自分に原因はないと拒否をする夫。
そして互いに思いやりを忘れてしまい、夫の心は他の女の元へ。
「もう疲れちゃって…。
主人の不倫に気付かないフリして待ってようと思ったけど出来なかった…」
「旦那さんは? 朋佳ちゃんの何が不満なの?」
「子供が欲しいって言われるのが嫌みたいで…。
『お前は俺に原因があると思ってるんだろ?
それが目的の行為ならもう女として抱けない』って…」
俺は朋佳に何も言ってやれなかった。
ただ…。
「病院で検査して、自分に原因があると解るのが怖いんですかね…」
「うーん…。そりゃ怖いと思うけど…」
朋佳の旦那は修二みたいに
“本気の愛”じゃない様な気がした。
ただ誰でもいいから、自分を求めてくれる女を抱いただけ…。
「けど?」
「ごめん。
俺はすぐに子供が出来たから“朋佳ちゃんの気持ち解るよ”なんて、軽々しく言えない…」
「…何か修二さんらしい…」
「え?」
涙に濡れた頬は赤く染まり、小さな微笑みを見せた。
「もし修二さんが同情の言葉を私に掛けたら怒るところでしたから…」
「…俺は元嫁が嫌いだから他の女を好きになった訳じゃないよ。
きっと朋佳ちゃんと同じ様に、俺を待っていてくれたと思う」
「え?」
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