Side 和斗  笑顔に隠した涙

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「修二さんは不倫相手の女の人と一緒にならなかったの?」 「うん。 相手の女にも彼氏が居て、そいつの所に戻ったよ」 「どうして?」 「修さんが離婚する気でいたの知らなかったから。 彼氏も浮気してたから、そいつに戻ったって辛いだけなのにな…」 秋恵は今頃何してるだろう。 佳春の隣で笑ってるかな…? 「和斗、その女の人知ってるでしょ」 「…何で?」 「女の勘」 秋恵が佳春の浮気に気付いた時も“女の勘”だと言ってたな。 本当、恐ろしい…。 「私はその相手、あっきだと思うんだけど」 「…何で?」 ーーー…俺、何かした…?ーーー 自信満々の視線が突き刺さり、掌を冷たい汗が包んでいる。 「あっきが彼氏と同棲を始めたのが半年前で、修二さんの離婚も同じ頃。 離婚しようとしてるの知らなくて彼氏に戻った。 和斗、誤魔化すの下手だよ」 「…参りました…」 修二と秋恵の恋は、ずっと俺の中に閉まっておく筈だった。 こんな簡単に知られてしまうなんて…。 「でも不思議だな。 不倫なんて最低だけど、修二さんもあっきも嫌いになれない。 あっきもきっと苦しんで諦めたんだね…」 「…うん」
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