Side 和斗  笑顔に隠した涙

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昨日の事の様に思い出される、修二と秋恵の秘密の恋。 2人が選んだ答えは、本当にこれで良かったのだろうか。 「和斗の力じゃ何にも出来ないんだから、考えたって仕方ないでしょ」 「…ハッキリ言うなよ…」 「離婚は恋人同士が別れるのとは訳が違う。 子供が居たら尚更。 それだけ精神的に疲れる事をしたんだから、修二さんだって気が抜けて当然よ」 少し溜め息を吐き出して寂しそうに微笑んだ。 朋佳の心にも“離婚”の二文字はあるのだろうか。 「うーん…」 「ちょっと休んで、あっきを迎えに行くタイミングを待ってるんじゃない?」 「そうだといいな」 不思議な気持ちになった。 今まで一度も見えた事が無かったのに。   “堂々と太陽の元で手を繋いで             微笑み合ってる姿” そんな2人が浮かんでくる。 「…今の私にはそんな精神力、残ってないな…」 「…俺も修さんと一緒だよ」 「え?」 「兄貴は姉ちゃんの所に戻ってくると思う。 俺も勘だけどな」 「…当たらなさそう」 「…失礼だな」 「嘘よ。…ありがとう」 “好きな人の子供が欲しい” そんな女の顔をしていた。 どうか朋佳の時計も針を進めて、本当の笑顔を連れて来てくれますように…。
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