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修二は頭の中の記憶を辿って何かに気付いた様だ。
でもこの話は里子にしかしてないし…。
里子が店に来る筈ないし、来たとしても言わないだろうし…。
何に気付いた…?
「前にあきが“浮気された事ないかずに…”って言ってなかったか?」
ーーー…何でそんな些細な事覚えてるんだ、
この人は…ーーー
時々修二の記憶力を恨みたくなる。
でも自ら秋恵の名前を口にするなんて…。
「修さん、よく覚えてるな。
秋恵には話してなかったから。
浮気されて別れたなんて、格好悪くて言えねぇよ」
「男のプライドか? 和斗も持ってたんだな」
「修さん、ひど…」
そりゃ俺だってプライド位あるさ。
『浮気される=俺に満足してない』
そんな風に思うのは普通だろ?
白い煙を吐き出しながら心の中で呟いた。
「俺の予想は、別れた時にあきが優しくて好きになった。
…だろ?」
「…80%当たり…」
「後の20%は違うのか?」
あの頃伝えられぬまま、心の中にしまい込んだ想いが甦る。
“大切な人”
恋人にならずとも、その想いは今も変わらない。
「秋恵の奴、優しくなんてなかったよ。
別れた理由言ってなかったから仕方ないんだけど、ずっと説教されてさ。
フラれた上に説教かよって」
「あきらしいな」
秋恵を懐かしむ様に、修二はそっと微笑んだ。
別々の道を歩んでいる月日は、秋恵の名前を口にしても涙が溢れない位彼を強くしてくれたのか。
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