Side 和斗  後悔

6/10
前へ
/242ページ
次へ
また時は経ち季節は進んで、街の木々は色付いていた。 今日は遅番の日。 いつもは俺が先に出勤して店を開けるけど2週間に一度、修二が先に出勤する日だ。 少しのんびり出来るけど、28歳の男・一人暮らし。 特にする事もないんだけどな… と思いながら街に出た。 もしも今日が遅番じゃなかったら…。 街へは行かずに真っ直ぐONEへ行っていたら…。 秋恵…。 アンタは嘘を吐かずに俺を頼ってくれたかな…? 『もう俺の中だけには留めておけない』 そんな想いのまま、ONEの裏口を開けた。 少し離れたカウンターには、いつもと変わらない修二の笑顔がある。 どこから話せばいい? どう話せば修二を傷付けずに済む? 「おはようございます」 「おはよ」 横目で店に客が居ない事を確認する。 話すなら今しかないよな…。 ーーー大丈夫。大丈夫だから…ーーー おまじないの様に心の中で何度も繰り返し、修二を呼んだ。 「修さん?」 「ん?」 「ちょっといいですか? プライベートな話」 「? いいけど…、なした?」 店に入って“マスター”と呼ばなかったのは“仕事じゃない”と想いを込めたかったから。 不思議な顔をしながら修二が近付いて来る。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加