Side 和斗  後悔

7/10
前へ
/242ページ
次へ
「あの…佳春さんから連絡って来ます?」 「たまーにな。 営業課長に昇格したから忙しいって言ってたけど…」 「それだけですか?」 「? うん。何で?」 予想通りの答えだった。 浮気していた事を知る親友に“彼女と同棲してる”なんて話さないよな。 「…転勤したの知ってます?」 「え?」 「○○の支店に転勤になってるんです。4月に」 「そうだったのか…」 目を丸くして遠くを見つめていた。 これから話す事は必ず修二を傷付けるだろう。 佳春を信じて“親友の彼女だから”と諦めてしまった想い…。 どれだけ時が流れても消えない“愛”…。 また修二を苦しめてしまうだろうか。 「秋恵には言うなって言われてたんですけど…。 秋恵も引っ越して同棲してるんです」 「…え?」 目線は合ってる筈なのに修二は俺を見ていない。 “同じ街に居ると思うだけで         会えなくても生きてゆける” 知らない方が幸せだという事もあるよな…。 ーーカランーー 「いらっしゃいませ~」 客が来た事を知らせる鐘の音は、俺達の話を中断させる。 動けずにいる修二の代わりにカウンターへと足を進めた。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加