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「遠く離れて助けられなくなるなら“迎えに行くから待っててくれ”って、ちゃんと伝えれば良かった…」
力一杯両手で冷たいグラスを包み込んで、感情を抑え込んでいる姿が痛々しくて…。
修二の隣に行き肩に触れた。
「…胸、貸しましょうか?」
「…晴花ちゃんに内緒か?」
「…はい」
少しだけ微笑んだ後、修二は声を押し殺して大粒の涙を流した。
いつの日かされた様に、背中にトントンと一定のリズムを刻む。
暫く時間が流れると、修二の震える心も落ち着きを取り戻した。
「…和斗、ありがとな」
「はい。
…修さん、今からでも遅くないと思いますよ?」
「ん?」
「俺やっぱり、秋恵は修さんと幸せになって欲しい…」
「…ありがと。もう少し酒付き合ってくれる?」
「はい」
今日告げた真実は修二の心に“後悔”として残ってしまった。
数日が経った10月25日。
秋恵にメールを送った。
『誕生日おめでとう!
辛い事があったらいつでも言って来いよ』
1行のメールに全てを込めた。
『ありがとう。
辛い時はいつでもメールするね』
と、偽りの文字。
なぁ、秋恵?
修二よりも長い時間お前を見て来たから、笑顔の仮面を被ってる事位すぐに気付くよ。
独りで頑張らなくてもいいのに…。
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