Side 和斗  タイトル未定

4/13
前へ
/242ページ
次へ
「嫌だよ」 「そう言うと思ったよ」 秋恵が街を出て行く前に見せていた作り笑いは、姿を消していた。 秋恵もまた、修二と別々な道を歩んでいた日々が己を強くしてくれたのか。 今日修二に呼ばれたという事は…。 何かしらの形で2人の恋は前に進むのだろうか。 カタン 「あ、マスター。お帰りなさい」 「ただいま。悪かったな」 修二が裏口からカウンターに姿を見せた。 「いいえ、全然。 飲んでる奴1人しかいませんから」 「あき…、久しぶり」 「うん」 各々の目に互いの姿を映し出した瞬間、2人は微笑み合っていた。 その光景を見ながら俺も自然と笑みが零れる。 「修さんも飲みますか?」 「うん」 2人をずっと見ているとなぜか涙が溢れそうで、グラスを取りに裏へ下がった。 やっぱり遠く離れたって、愛する人は想い出になんてならないよな…。 修二のグラスにビールを注ぎ、カウンターに置いた。 「「「カンパーイ!!」」」 今日もまた大好きなグラスの音で幕を開ける。 なぁ、修二? 今日秋恵との再会で、俺の願いは届いたと思ってもいいよな…?
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加