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「元気にしてたか?」
「うん。…今は元気だよ」
「今は?」
「…もう嘘吐くのやめるね。
この街を出て暫くしてからずっと笑ってなかったな…」
白い煙に乗せて感情の全てを吐き出している様な気がした。
やっと見せてくれた秋恵の本当の声に、俺と修二は耳を傾けた。
「佳くんと暮らし始めて暫くすると、遅く帰ってくる日が続くようになったんだ。
毎日ご飯とお弁当作って、1人で夕食食べて。
その頃から素直に笑えなくなった…」
少し俯いて涙を堪える姿が、その頃の辛さを物語っている。
「初めてケンカした日にね?
今までの事が全部爆発して、怒りをぶつけたの。
そしたら近付いてきた佳くんから夏美さんの香りがした」
やはり佳春は夏美との関係を続けてきたんだ。
ーーーと、言うことは…ーーー
「夏美さんと別れてないって認められたら何か吹っ切れた。
今は佳くんと別れて直兄の所に居るんだ。
2人共、ごめんね。直ぐには報告出来なかった…」
「そう…だったんだ…」
思わず心の声が言葉になる。
何でも自分の中に閉じ込めてしまう秋恵が怒りをぶつけるなんて…。
よほど辛かったのだろう。
「佳春から葉書届いてさ…」
「葉書?」
少しの沈黙と泣き出してしまいそうな空気を修二が破った。
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