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「去年の春に離婚した。
ちょうどお前と佳春に街で会った頃」
「…そう…だったんだ…」
ーーー俺にも心の準備をさせてくれよ…ーーー
何の前触れもなく知らされた真実は、ただ秋恵を驚かせた。
小さく呟いた答えはようやく絞り出した心の声。
知っていた俺は余りにも突然過ぎて声も出ない。
「もう飲んで忘れようか。和斗、閉めてきて」
「はいよ」
「そうだね。飲もうか」
店の扉に付けられている札をcloseに変えて、看板の電気を消した。
夏の空気に包まれている夜空は、沢山の星が浮かんでいる。
「…星見たの、久しぶりだな…」
声となって放たれた言葉は、空しく響いて消えてゆく。
ようやく2人が堂々と愛を語り合える立場になって、今日の再会を迎えたんだ。
目頭が少し熱くなり、大きく息を吐き出して店の中へと足を進めた。
「おーい、秋恵~? 大丈夫か??」
「全然平気だよ~」
あれから1時間と少し。
もうすぐ時計は日付を変える。
俺達は会えなかった時間を埋めるように沢山話をした。
笑顔の数と同じ位、アルコールも体の中に流れてゆく。
長時間運転してきた疲れと、再会出来た嬉しさで秋恵は出来上がっていた。
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