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「もう帰るか?」
「嫌だぁ…。帰りたくないよぉ…」
完全に酔っ払っている秋恵の姿を見て、思わず笑みが零れる。
本当に修二に会えて嬉しいんだろうな…。
ーーーあ、そうだ…ーーー
「俺明日昼から用事有るから先に帰るな。
じゃ修さん、秋恵よろしく」
「え? ちょ…和斗!?」
“用事が有る”なんて少しの嘘を置いて店を出た。
壁の高い位置に居場所を定めている時計は12時を指していた。
『長い針と短い針が
重なり合うその刹那にまた
いつか僕らは出逢うだろう
全て許すような笑顔で』
2人もまた、時を進める事が出来ずに苦しんでいた。
“歩く道は違っても目的地は同じ”
今日この日の為に2人は、別々な道を遠回りしてきたんだろうな…。
水分を多く含んだ重たい空気の中、いつもの帰り道を歩いた。
修二と秋恵が心の底から笑い合ってる姿を見ていて、どうしてもアイツに伝えたい事があった。
近くにあったベンチに腰を降ろし、ケータイを操作する。
久々に画面に映し出された名前を見つめて、胸が高鳴っていた。
もう寝てしまったかな?
『…もしもし?』
「…久しぶり。起きてたか?」
『起きてましたけど…、どうして…?』
「…こんな時間にごめんな。晴花…」
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