Side 和斗  タイトル未定

8/13
前へ
/242ページ
次へ
「もう帰るか?」 「嫌だぁ…。帰りたくないよぉ…」 完全に酔っ払っている秋恵の姿を見て、思わず笑みが零れる。 本当に修二に会えて嬉しいんだろうな…。 ーーーあ、そうだ…ーーー 「俺明日昼から用事有るから先に帰るな。 じゃ修さん、秋恵よろしく」 「え? ちょ…和斗!?」 “用事が有る”なんて少しの嘘を置いて店を出た。 壁の高い位置に居場所を定めている時計は12時を指していた。   『長い針と短い針が      重なり合うその刹那にまた    いつか僕らは出逢うだろう        全て許すような笑顔で』 2人もまた、時を進める事が出来ずに苦しんでいた。 “歩く道は違っても目的地は同じ” 今日この日の為に2人は、別々な道を遠回りしてきたんだろうな…。 水分を多く含んだ重たい空気の中、いつもの帰り道を歩いた。 修二と秋恵が心の底から笑い合ってる姿を見ていて、どうしてもアイツに伝えたい事があった。 近くにあったベンチに腰を降ろし、ケータイを操作する。 久々に画面に映し出された名前を見つめて、胸が高鳴っていた。 もう寝てしまったかな? 『…もしもし?』 「…久しぶり。起きてたか?」 『起きてましたけど…、どうして…?』 「…こんな時間にごめんな。晴花…」
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加