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耳に届いた声はあの頃と何も変わらない。
そして俺の気持ちも何一つ変わっていなかった。
もう大丈夫。
あの言葉、今なら言える…。
『大丈夫ですよ。元気ですか?』
「うん、何とかな。あのさ…」
『はい?』
愛しい声は少し涙声の様な気がした。
大きく息を吐き出して言葉を探す。
「…あの時、晴花の気持ちに応えてやれなくてごめんな…」
『…え?』
「ずっと後悔してたんだ。
俺が前に進めなかった時晴花は助けてくれたのに、俺は何にもしてやれなかった事…」
『…そんな事ないですよ。
私も和斗さんに助けられましたから…』
晴花の言葉を噛み締めながら空を見上げた。
流れそうになる涙を落とさぬ様に…。
どんなに遠く離れていても空は繋がっているんだ。
「…ありがとな。…晴花?」
『…はい?』
「…俺、待ってるから。
またお前に会える日をこの街で」
『…和斗さん?』
「どうしてもそれだけ伝えたかったんだ。
じゃ…、またな」
『…おやすみなさい』
電話を切ってまた空を見上げた。
大丈夫…。
その日まで待っていられるよ…。
なぁ、晴花?
“この街で待ってる”
この気持ちは、今伝えなきゃいけない気がしたんだ。
アンタは受け入れてくれるかな…?
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