第5章 クールラント一族

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ルシエルは武器商の店を出た。 身長が伸びてきたので、弓を替える相談をしたあとだった。 商人に頼めば、喜んで自宅へ何種類も持ち込んでくれるだろうが、店の裏にある射的場で実際に試してみたかった。 競技会用ではない。 実戦に使えるものでなくてはならないのだ。 動く的を正確に打ち抜き、そして正確に外せなくてはならない。 西の空が赤い。 染まる雲の群を見て、ルシエルの足は急いだ。 今日は、父親が帰ってくる。 その足を止めさせたのは、ある屋敷の門の前で泣いている少女の姿だった。 小間使いなのか、フリルを飾った可愛らしいお仕着せを着ている。 金色の巻き髪にレースのボンネを乗せている姿は、まさに愛くるしいお人形というところだろう。 湖水のような青い目を、泣き腫らしてさえいなければ。 薔薇色の唇の端に、叩かれたむごい跡さえついていなければ。 「どうした?」 驚かさないよう、抑えた声で話しかける。 「‥‥クールラント家の若様‥‥。」
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