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「そうでしょうか?
僕より優秀な養子を迎える良い口実になるのではありませんか?」
ルシエルはつきはなした口調で言う。
「まあ、なんてことを‥‥。
昔はあんなにわたくしを慕ってくださったのに。
でも、これも成長の証と受けとめなくてはいけませんのね。」
(ただの反抗期、そう言いたいのか。)
ルシエルは廊下を進む。
食堂にはすでに花が飾られていた。
久々に屋敷の主人を迎えての晩餐の支度が、滞りなく進められている。
マントルピースの上には、先日の競技会での成果である弓技の部の優勝旗が飾られている。
刺繍された名前は無論ルシエルのものだ。
ルシエルは複雑な気持ちでそれを眺めた。
この旗を受け取る自分の手は、不正で汚れていたと思う。
しかし、それがなんだ。
ルシエルの中で叫ぶ声がある。
一番でなければ、自分は父親に存在さえ否定されるのだ。
きれいごとなど弱者の論理だ。この世の中は残酷なのだ。
(エリオット一人を汚い手で蹴り落としたくらいがなんだ。
みんなやっていることじゃないか。)
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