第5章 クールラント一族

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エリオットの父親が、急速に豪商に成り上がるのに裏でどんな汚い手を使ってきたのか、エリオット自身も本当は知っているはずなのだ。 ルシエルは思う。 自分たちもいずれ大人になって、同じことを繰り返していくのだ。 人の上に立ち続けるために。 他者を出し抜くために。 自分のしたことなど、ほんのゲームの手始めにすぎない。 これが自分に与えられた生き方なのだ。 クールラント一族の自分が踏襲していく道なのだ。 疑問など抱く余地はない。 迷いなどあるはずがない。 なのに―――熾(おき)のように胸にうずく、この苛立ちはなんなのか。 ルシエルは階段を上り、自分の部屋に向かう。 階段前の小ホールに、クールラント家の先祖が着て武勲を立てたという銀色の甲冑が立っている。 ルシエルは幼い頃から、これが大嫌いだった。 (ろくに傷もついていない美々しい鎧を飾っておくなんて、自分たちが臆病者だと吹聴しているようなものだとは思わないのだろうか。)
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