第5章 クールラント一族

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ルシエルはエレノアの眼を見据え、真意をはかろうとする。 (この女はどこまで知っているんだ。) 「もちろん、旦那様の許可があればですが。 それを今日、うかがいたいと思っているのです。」 「そうですか。僕は別に。」 ルシエルは語尾を濁す。 落ち着け、と自分に言い聞かせる。 (馬屋へ向かうのを庭師に見られただけだ。 ディコンがみつかったわけじゃない。) そもそもあの地下室のことは、自分と馬丁の老夫以外誰も知らないのだ。 しかし、エレノアが不審を抱いているのは確かだ。 これまでより、一層気をつけて行動しなくてはならない、とルシエルは自戒する。 ルシエルの反応にエレノアは満足そうな顔をした。 何がしかの弱みをつかんだ、と確信したのだろう。 あなたのことなど全てお見通しですよ、と言いたげな笑みを残し、階段を降りていく。 その背中を、思わずきっとにらみ、ルシエルが声をかける。 「馬屋といえば、あのお爺さんは、どうしたんでしょうね。 馬丁のお爺さんは。 僕をあんなに可愛がってくれたのに、何も言わずにいなくなってしまった。 彼がどこへ行ったのか、あなたはご存知ですか?」
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