第5章 クールラント一族

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「ずいぶん昔の話をされますのね。」 エレノアは後ろを向いたまま言った。 「年をとったので辞めたのでしょう。 余生を過ごすのに、地方の親族のところへ身を寄せたと聞いていますよ。」 「おかしいですね。 あのお爺さんは、子供も無く天涯孤独だと言っていたのに。 ‥‥僕はあのとき検問所へ聞きに行ったんですよ。 運河へも行った。 お爺さんが通らなかったかって、きいて歩いたんです。 でも、通ってなかった。 消えてしまったんです、この街で。」 幼いルシエルは必死で後を追ったのだ。 あのお爺さんだけが、ルシエルに「泣いてもいい」と言ってくれた。 彼の弱さを受け止めてくれた。 エレノアが振り返った。 冷笑をうかべて。 「やめましょう。 仕方ないじゃありませんか。 秘密を守れない者は存在できないんですもの。 それがこの街の掟ですよ。 旦那様がお守りになっているこの街の秩序ですよ。」 「‥‥あなたが、密告したのですか?」 ルシエルの声は怒りで震えている。
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