第5章 クールラント一族

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そして、徐々にルシエルを母親から引き離し、父親に取り入った。 クールラント卿が、代々この家に仕えてきた執事を突然クビにして、代わりにエレノアを使用人の筆頭に置いた時、この家の人間は主人とエレノアの関係を確信したのだった。 クールラント夫人が慈善活動にのめりこみ、家を留守にするようになったのはこの頃からだった。 しかし、誰も夫人を責めることはできなかった。 すでに跡継ぎは産んでいる。 貴族の夫人として最も重要な役割は、すでに果たされているのだ。 クールラント卿はルシエルに似て、整った顔だちをしていた。 背は高いが、軍人としてはいささか線の細い感じがする。 壮年らしい体型の崩れは一切見られず、引き締まった身体からはストイックな雰囲気がにじみ出ている。 ルシエルは、この人と一緒にいることにいつまでも慣れることができない。 血を分けた親子だということが、今も信じられなかった。 ルシエルは、ナフキンで口元を拭う。 緊張から、喉元になにかせりあがってくような不快感が絶えない。 食事のほとんどを飲み込むことができずに、ただ形だけフォークでつつき続けていた。
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