77人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、徐々にルシエルを母親から引き離し、父親に取り入った。
クールラント卿が、代々この家に仕えてきた執事を突然クビにして、代わりにエレノアを使用人の筆頭に置いた時、この家の人間は主人とエレノアの関係を確信したのだった。
クールラント夫人が慈善活動にのめりこみ、家を留守にするようになったのはこの頃からだった。
しかし、誰も夫人を責めることはできなかった。
すでに跡継ぎは産んでいる。
貴族の夫人として最も重要な役割は、すでに果たされているのだ。
クールラント卿はルシエルに似て、整った顔だちをしていた。
背は高いが、軍人としてはいささか線の細い感じがする。
壮年らしい体型の崩れは一切見られず、引き締まった身体からはストイックな雰囲気がにじみ出ている。
ルシエルは、この人と一緒にいることにいつまでも慣れることができない。
血を分けた親子だということが、今も信じられなかった。
ルシエルは、ナフキンで口元を拭う。
緊張から、喉元になにかせりあがってくような不快感が絶えない。
食事のほとんどを飲み込むことができずに、ただ形だけフォークでつつき続けていた。
最初のコメントを投稿しよう!