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(今頃ディコンは、腹をすかせていないだろうか?
飲み水は足りているだろうか?
退屈しすぎて、ふらふら地下から出歩いたりしていないだろうか?
エレノアの策略によって、馬屋が取り壊されることになったら、これから彼をどうかくまっていけばいいのか‥‥。)
ディコンと遭遇してからというもの、なぜ彼を助けてしまったのか、とルシエルが自問しない日はなかった。
自分にとってこの状況は、破滅につながる。
なぜそんな危険を冒してまで、あの子を自由にしてやりたい、などと思ってしまったのだろう。
(似ているから?―――居場所のない自分と。)
不意に父の声が沈黙を破った。
「ひととおりエレノアの報告は受けているが、学業と武芸のほうはどうだ?」
はじかれたように顔をあげるルシエル。
そこで初めて、自分が父の視線を避けて顔を伏せていたことに気づく。
「学業は、エレノアからお聞きのとおりです。
武芸のほうは‥‥ご覧ください。」
ルシエルは優勝旗を右手で指す。
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