77人が本棚に入れています
本棚に追加
クールラント卿は何も言わずうなずいた。
「シャルマン公が、お前の自警団の働きを褒めてくださった。
上級士官学校への推薦状を書いてくださるそうだ。よかったな。」
にこりともせず、そう言うと、ぐい、とグラスを傾ける。
ルシエルはうかがうように父親の顔を見る。
今、自分は褒められたのだろうか。
確信が持てず、問い返す。
「僕は‥‥僕は、この家にふさわしい息子になれているでしょうか?」
声が震えを隠せない。
「無論だ。」
柔らかな声音に、ぱっとルシエルは顔を上げる。
しかし、父と目が合うことはない。
その視線が捉えているものは、自分ではなく後のエレノアなのだとすぐに気づく。
「それもすべて、エレノアにお前の養育をまかせたおかげだな。」
父が今日初めて口元を緩めるのを、ルシエルは冷めた目で眺める。
年をとっても、貴族らしい威厳を持ち、雅やかな笑い方をする。
「もったいないお言葉ですわ。」
エレノアは、待ってましたとばかりの艶めいた声で、賛辞を受ける。
最初のコメントを投稿しよう!