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意味ありげに微笑み合う二人は、とても美しく良く似合っている。
ルシエルでさえもそう思わずにいられない。
もともと父親と母親が貴族同士の政略結婚であったことなど、ルシエルは百も承知だ。
愛なんてこの家族には、始めから存在しなかった。
ルシエルはそれを哀しいとは思わなかった。
自分は何も失っていない。
最初から無かったものを失うことなんてありえない。
ただ‥‥わからないだけなのだ。
この説明のつかない、ひりつくような餓え(かつえ)を、どうやって押し殺せばいいのかが。
そんなルシエルを見透かすように、エレノアが微笑みをむける。
嘲笑だ。
兄弟でもいたら何か違っていただろうか、と時々ルシエルは考える。
こんな餓えも苛立ちも、わかちあえるのだろうか。
互いを支えあい、庇いあうことができただろうか?
(いや、俺一人で充分なんだ。
こんな思いを抱えて生きるのは。)
「ルシエル、くれぐれも慢心するんじゃないぞ。
これからは、私とシャルマン公、両方の顔に泥を塗ることになるんだからな。
家名に恥じるような成績は残すなよ。」
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