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わかっているな、と念を押し、見下ろすように正面から指差される。
肘から弧を描くその動作に、ルシエルは思わずびくっと怯え、身を引いて椅子から落ちかかる。
父親の右手に、馬用の鞭(むち)が握られているのが見えた気がしたのだ。
振り下ろされたあとの火傷に似た激痛。
幼い頃の忌まわしい記憶が、彼の脳裏に瞬時によみがえったからだった。
「私が恐いのか?
十五にもなって、お前はあいかわらず意気地なしだな。」
愉快そうな笑い声。
呆然として見上げる先には、自分とよく似た顔がかたちづくる、くったくの無い笑顔。
自分より弱いものを虐げるのは、楽しいに決まっている。
(だってここは、化け物の巣窟。
―――残酷な世界じゃないか。)
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