第6章 秘密を守る領民

2/27
前へ
/335ページ
次へ
アルシュは、ソロルが模写した街の地図に、爪先で印をつけた。 朝から独りで領区内の武器商を一軒一軒回っている。 「蛇使いの男」の「蛇」が武器の一種という仮定に基づいての聞き込みだが、結局何もつかめていない。 日はとうに落ち、だんだんに夕闇が濃くなってきている。 道行く人も減る一方だ。 捜査をあせる気持ちとうらはらに、腹の虫はさっきから元気に鳴いている。 あと一軒だけ回って今日のところは終わろう、と決め、歩を進める。 大通りに面した一角で、一つの扉が開かれた。 部屋の明かりが筋になって道路に伸びる。 中から店員らしき男が出てくると、前掛けのポケットをごそごそやってマッチを取り出し、店の玄関前にぶら下がる角灯に火を入れていく。 アルシュは足を止め、その様子を見ていた。 先ほどまで扉が閉められて人が出入りする様子もなく、気にも留めていなかった。 開いた扉の隙間から、店内に武具が並んでいるのがちらりと見えた。 (ここは武器商なのか? 日が沈んだ今頃から店を開けたというのか?)
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加