第3章 シャルマン領区の守護天使

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シャルマン領区には保安部隊の詰め所がいくつか設置されている。 その司令部となるのが保安部隊本部。 外見は切妻屋根の石造りの建物だ。 装飾等の無い、灰色で平面的なファサードは見る者にしかめつらしい印象を与える。 三人の歩く床は、切石のモザイク張りになっており、華美ではないものの上品で精緻な佇まいとなっている。 一階入り口を入ると、広間のような隊員の詰め所。 常に武器を携帯した隊員が待機し、いつでも出動できるようになっている。 その奥に届出などを受ける窓口がいくつか設けられ、廊下を進んだ先は会議室。 その奥が資料保管庫。 二階は主に幹部の執務室が連なり、二人には見せてもらえなかったが、地下には罪人の留置場があるのだという。 ひととおり内部をめぐると、ガリュー氏は通常の任務に戻り、二人は、資料保管庫に戻って強盗事件の資料を見せてもらった。 紙や綴じ本はこの国ではまだ高価な品物だが、ふんだんに使って資料が保管されている様子に圧倒される。 資料棚にかこまれた狭い部屋で、二人は仕事にかかった。 ソロルは、王都で拝領してきた紙に木炭を使い、この街の地図や、被害の出ている宝飾品の特徴などを仔細に写し取っている。 そういうことは器用なのだ。 その間、アルシュは強盗事件の詳細について記録を読みこんだ。
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