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ちょうど打ち合わせが一段落したようで、身支度が始まる。
くだんの少年の左手には携帯用の小型弓。
すでに、右足の太ももに二本の皮バンドで矢筒を装着している。
右手に弓懸(ゆがけ)を被せ、慣れた手つきで皮紐を締めていく。
王都でもあまり見ない鹿革の上級品だ。
右手首の内側に口を添わせてきゅっと締める。
その動きすらも流麗だ。
陽光に頬のうぶ毛を光らせる横顔は、神話の登場人物を思わせた。
「まさに、この街の守護天使だね。」
ソロルが感嘆する。
「まぁ、雰囲気は申し分ないけどな。」
アルシュがぼそぼそと同意する。
廊下に立ちつくしていた二人に、ふいに視線が投げかけられる。
「そちらは‥‥王都からの?」
つかつかとルシエル・クールラントが近づいてくる。
「ご存知でしたか。さすが情報が早いですな。」
隊員の一人がアルシュとソロルを紹介する。
「そうですか。
僕と変わらないくらいの年頃にお見受けしますが、入隊試験合格とは、すごいですね。」
淡々と賛辞を述べる。
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