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―――二週間前にさかのぼる。
ルシエルは学校からの帰り道を歩いていた。
弓技場での練習に時間を費やし、日は暮れかかっていた。
普段、一緒に帰りたがる同輩や後輩もさすがに帰った後で、珍しく一人で歩いていた。
街の片隅の道端に―――それは、ずっとそこに居た。
それは、明るい頃から居たのだが、誰の目にもそれが人だとは認識されていなかった。
穀物、野菜などを保管する目の粗い麻袋。
泥がはね、所々すり切れたそれが落ちているだけ。
どこかの荷馬車から落ちてそのままになっているだけ。
そんな風にしか見えなかった。
その袋に黒っぽい両手が生え、ずるり、ずるり、と石畳を這って移動するのをルシエルは目撃した。
移動する先には、昨日の雨でできた小さな路上の水たまり。
道の窪みにわずかに水が溜まっている。
麻袋は、頭らしき部分をもたげ、あたりを見回すように左右に少し動いたが、そんなものを被っていては、やはり視界が悪いのだろう。
肝心の正面が良く見えていないらしい。
息を詰めて見守るルシエルに気がつかない。
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