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「ここ、どこですか?」
「俺んちの古い馬屋。今は使ってない。」
ディコンの問いにルシエルは振りかえらず答える。
日が完全に落ちるのを待ち、人目を避けてルシエルはクールラント家の敷地内にディコンを連れてきた。
「俺が小さかった頃、ここで馬を飼ってた。
馬丁の爺さんがいて、俺を可愛がってくれた。
今はもっと大きな馬屋がある。爺さんもいなくなった。」
木造の馬屋は、屋根が剥がれかかっていた。
ガラスのはまっていない窓が一つあり、姿を見られないよう、その真下の壁に背を張りつけてディコンは座っていた。
その左腕に新しい傷が増え、わずかに血が滲んでいる。
転がっている飼葉桶。
隅々にうずたかく積まれた藁。
壁には、古びた馬具が埃を被ってぶら下がっている。
ルシエルはさっきから床に散らばる干草と土ぼこりを足で掻きよせ、床に何か探していた。
「あんた‥‥俺をかくまってくれるんすか。」
ぼそり、とディコンが問う。
「お前さ‥‥逃げないの?」
問いに問いで返され、ディコンは困惑する。
「俺から、逃げないの?」
ルシエルは後ろを向いたまま、革の長靴(ちょうか)で床をこする。
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