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「気づいてる?
俺はさ、さっきからお前に背中を向けてるんだよ。隙をついて逃げなくていいの?」
「で、でも、俺、行くとこないし‥‥。」
は、とルシエルがため息をつく。
「お前、馬鹿だな。
俺はさっきお前を脅して、やりたくもないことさせたんだぞ。
そんな奴にくっついてきていいのお前?
それじゃ、逃げてきた意味無いだろ。」
「い、今さら、何言ってんすか。
あんたこそ‥‥あんたこそ、俺が気持ち悪くないんですか?
あれ見ても、俺が恐くないんですか?」
ディコンが泣きそうな顔で声を振り絞る。
「大きな声たてんな。」
ルシエルが振りかえり、ふっと笑う。
「心配するなよ。
お前みたいな不思議な能力はないけど。
俺もまぁ、たいがい化け物だからさ。」
不可解な人だとディコンは思う。
優しく紳士的かと思うと、急に暴力的な一面を見せる。
しかし次には、まるでそれを悔いるように、どこか悄然として人と距離をとろうとする。
この綺麗な人の中には、臆病な獣が住んでいるみたいだ、と思う。
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