第3章 シャルマン領区の守護天使

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「気づいてる?  俺はさ、さっきからお前に背中を向けてるんだよ。隙をついて逃げなくていいの?」 「で、でも、俺、行くとこないし‥‥。」 は、とルシエルがため息をつく。 「お前、馬鹿だな。 俺はさっきお前を脅して、やりたくもないことさせたんだぞ。 そんな奴にくっついてきていいのお前? それじゃ、逃げてきた意味無いだろ。」 「い、今さら、何言ってんすか。 あんたこそ‥‥あんたこそ、俺が気持ち悪くないんですか? あれ見ても、俺が恐くないんですか?」 ディコンが泣きそうな顔で声を振り絞る。 「大きな声たてんな。」 ルシエルが振りかえり、ふっと笑う。 「心配するなよ。 お前みたいな不思議な能力はないけど。 俺もまぁ、たいがい化け物だからさ。」 不可解な人だとディコンは思う。 優しく紳士的かと思うと、急に暴力的な一面を見せる。 しかし次には、まるでそれを悔いるように、どこか悄然として人と距離をとろうとする。 この綺麗な人の中には、臆病な獣が住んでいるみたいだ、と思う。
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