第3章 シャルマン領区の守護天使

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ディコンの喉がごくっと鳴る。 「食べていいんすか?」 ルシエルはうなずく。 手を出しかけて、 「あ、あの、ここから取っていいんすか?」 また確認する。 伸びきった前髪の隙間から、警戒心の強い野生動物のようにうかがい見ている。 「あ、あの、でも‥‥。」 「お前、なんなんだよ。まだるっこしいな。」 いらだつルシエルに、ディコンがびくっと身を縮める。 「お、俺、いつも食事は床に撒かれてたんで。」 言ってから、急に恥じ入るように顔を伏せる。 「家畜みたいな扱いだったんで。」 ルシエルが無言でディコンの手をつかみ、パンを握らせる。 ディコンは、信じられないものを見るように呆然とその動作を見守った。 「あ、りがとうございます。」 そして目を潤ませてパンを口に運ぶ。 始めはおずおずと、やがて空腹が食事を無心にさせる。
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