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「お前に捜索願出されてるか調べてきたけど。やっぱ出てるな。
捕まえた場合の謝礼金、結構な額だぞ。
お前、懸賞金かけられてるってわけだ。」
ディコンは食べる手を止め、ぎゅっと両手を握り締める。
ルシエルは考えをめぐらせるように腕を組み、続ける。
「今の話では、やっぱり普通の労働契約じゃない。
違法な人身売買だな。
あと、この領区に入るとき、検問審査官に旅券を見せたか?」
「けんもんしんさかん、て、なんすか?」
「旅券、持ってないのか? 身分証明。
‥‥無いよな。
人身売買で買った人間の分なんて用意できるわけないよな。」
「領区またぐ移動の時は、俺たちはみんな集められて一番奥の檻に入れられて『夜行性の猛獣だから、陽に当てると騒ぐから』とかなんとか言って外側に黒い布掛けられるんですよ。」
「あとは袖の下使ってスルーか。」
ルシエルは納得がいったようにうなずいた。
「なるほどな。だから、お前の捜索願は非公式で出てる。
向こうも後ろめたいからだろ。」
「ひこうしき、だとなんなんですか。」
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