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「この領区では、表向きと裏側とを使い分けてるってこと。
非公式ってことにしておけばさ、検問官がお前たちの旅券不所持を見逃した不祥事も表ざたになんないだろ?
大人がみんな得するのさ。」
ディコンは感心して目を見開いた。
「あんたすごいっすね。なんでそんなことわかるんですか?
調べられるんですか?」
「俺の親父の威光だよ。郡保安部隊の捜査本部部長をやってる。
領区の保安部隊のもっと上の組織のお偉いさんだよ。
まあ、俺自身も品行方正で周囲の信用あるからな。
父の使いで来たといえば、保安本部の詰め所や本部には簡単に出入りできるし、書類なんかも見ることができる。」
ディコンの顔から、笑みが消える。
「あんた、やばくないすか、そんな立場で俺なんか拾って。」
「今さら、何言ってんだよ。
それより、すごい懸賞金。
お前、小屋の連中にずいぶん稼がせてたんだな。」
ディコンは不安げにうつむく。
「う、売らないでください‥‥俺、何でもしますから。」
消え入りそうな声で訴える。
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