第4章 いびつな双子

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「売らないよ。」 ルシエルは力強く即答する。 「だってお前、そんな懸賞金なんかよりもっと稼がせてくれるもんな、俺に。」 上機嫌な微笑みは、底知れない企みをのぞかせて。 それは、見るものの背筋をぞくりとさせるほど蠱惑的だった。 三日後、シャルマン領区に最初の強盗事件が起きる。 追っ手をうまくまいて、ほとぼりが冷めた深夜、クールラント家の馬屋にディコンは帰ってきた。 ルシエルの予想に反して、ディコンは疲れているどころかむしろ高揚しているように見えた。 「うまくいきましたね!」 弾む声。 「俺、うまいことやったでしょ!」 いたずらを成功させた悪童のような表情で、生意気そうな目を輝かせる。 (ああ、この子は本当はこんなふうに笑うんだ。) ルシエルはしばらく、その生き生きとした様子に胸をつかれて眺めていた。 やがて、疲労感とともに苦々しいものを胸から吐き出す。 「お前さ、何がそんなに嬉しいの? 犯罪やらされたんだぞ、わかってんのか。」 「わかってますって。」 にたにた笑いが止まらない。
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