第4章 いびつな双子

8/18
前へ
/335ページ
次へ
着替え終わったディコンが、ようやく追いついてきた疲労感を味わうように座って空を仰ぐ。 剥がれかけた屋根の梁の隙間から星が見える。 「俺、もう行くとこないんで。」 開き直ったように言う。 「見世物小屋には俺みたいな境遇の子が他にもいて、いつも一緒に逃亡企ててました。 毎回、俺一人なら、なんとかなるんですよ。 でも、中にはすっトロいのがいて。 捕まっちゃうわけですよ。 で、捕まったら、酷い目に合わされるってわかってるじゃないすか。 わかってるのに、一人だけ置いて逃げるとか、俺には無理で。 一人を犠牲にして逃げるとか、どうしてもできなくて。」 「お前、要領悪そうだもんな。」 ルシエルの苦笑。 「で、戻っちゃう。捕まっちゃう。 そんなことの繰り返しで。 今回初めて、一人で逃げてみたんですよ。 そしたら、このとおり! ‥‥ですけど、残されたみんなは、俺のこと裏切り者だと思ってるでしょうね。 小屋に戻ったところで、俺にはもう昔っからの仲間もなくしちまったってわけです。」 ディコンは目を伏せて自嘲する。
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加