第4章 いびつな双子

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「お前だって檻に閉じこめられてたんだろ? 自由が欲しかったんだろ? そのくせ俺には、檻の中へ戻れって言うのか?」 「じ、じゃ、何のために? 懸賞金がどうとか言ってたけど、ほ、ほんとの目的は金じゃないですよね。 あんた、金に不自由なんてしてませんよね。」 ルシエルの手から力が抜ける。 ディコンがあわてて逃れる。 ルシエルは一つ息を吐き、乱れた前髪を後ろへやって、がくりと尻をつく。 両足を前へ投げ出し、もう一度ぼんやり屋根からのぞく端切れの夜空を見上げる。 「‥‥復讐、かな。 いや、ひょっとしたらその反対なのかもしれないけど。」 月光を浴びてつぶやく顔が、いつになくはかなげに見えて、ディコンは胸が騒いだ。 二度目の強盗事件が起こる。 「じけいだん、てなんすか。 俺に向かって矢を射かけるとか、ひどいですよ。」 帰ってきたディコンが外套を脱ぎながら、ぶつぶつ文句を言う。 「スリルあって面白かったろ?」 ルシエルが、上機嫌でその頭をくしゃくしゃ撫でる。
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