第4章 いびつな双子

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ディコンはその日、強盗に入った屋敷内で、斧を持った下男に襲いかかられた。 ふいをつかれて、一瞬追いつめられはしたものの、斧の柄を食いちぎり、難なく撃退して屋敷を脱出した。 ルシエルに教わったとおりの逃走経路で逃げようとすると、裏門には、自警団を名乗る少年たちが何人も待ち伏せしていた。 あろうことか、彼らの指揮を執るのは見慣れた人物。 ほとんどの少年がどうしていいかわからず立ちすくむ中で、彼だけは、淡々と矢をつがえ、こちらをすがめた目で狙う。 たくさんの問いがディコンの頭の中を渦巻く。 が、そんなことはおかまいなしに、容赦なく弓音は鳴った。 ディコンの足元に、夜光塗料を塗った矢が、青い燐光を帯びて突き立った。 (外した!しかも地面になんて。) 一矢の矢筋を見たとき、やっとディコンにもルシエルの意図が理解できた。 わざわざ夜光塗料を塗って、自分に矢筋を見せたわけにも。 ディコンは背中を向けて逃走経路を走り出した。 そのかたわらを青い燐光がかすめても、矢が刺さることはけしてなかった。
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